ママネッットワークをつくるきっかけって?

●家庭の匂いを出さないように
子供がいるって言ったら主婦の片手間と思われて仕事をたのんでくれないかも…。私が独立した当初、毎日こんな風に考えていました。建築士としては31歳という若さ、女であることも不利であると考えていたのだと思います。まだ一歳になったばかりの子供を遅くまで保育所に預けて、土日の打ち合わせも夜の打ち合わせも大丈夫です!行きます!と慣れない夫に子守をがっつりまかせて出向きました。

●二人目を妊娠、出産
次第に生活にもなれ、仕事も充実してきたころ待望の2人目を妊娠!スタッフもいるなかせっかく起動にのってきた仕事がなくなっては困るとさらに仕事に打ち込みました。私はつわりがひどく、喉が切れて血がでるほどに絶え間なく嘔吐を繰り返していました。仕事の移動の車で運転しながら吐く。着いて打ち合わせの途中で吐く。帰りのパーキングエリアで吐いて仮眠する。帰って家族のご飯を吐きながらつくる。こんなはた迷惑な生活を4ヶ月ほど続け、つわりのあとは重いお腹を抱えて気づけば出産当日の朝まで働いていました。入院中も電話で仕事をこなし、帰った次の日から普通に仕事を始めました。気が張っていたのか仕事も楽しく充実し、休みたいとは思いませんでした。

●罪悪感との闘い
しかし2人目は1人目とはちがいました。両親に一年の約束で手伝ってもらい、その後保育所に入ってからは交互に熱を出します。断れる仕事は断り日程も変更してもらいましたが、どうしてもの時は車に熱のある子供を乗っけて、急に預けられなくなって~。すみません~。とすっとぼけ、ほかほかの子供を打ち合わせに同席させたこともありました。さすがにその時は罪悪感と疲労で天井がグルグル回りました。あぁ…極悪母でごめんよ。

●まさかの三人目~!!
そしてなんとかなるか?と3人目を妊娠。喜びもつかの間、四十路間近のせいか体がいうことをききません。つわり中は半日寝てることも多くなり脱水症状で点滴を何度もうちました。止められぬ仕事と育児にさめざめ泣きました。そして今さらに、今さらに思いました。

わたしこんなに頑張らんでもいいんじゃないか。。。

●働き方を考え直す
建築の仕事は依頼を受けてから完成まで半年から長いものでは数年に及びます。つわりがひどいからと言って、産後しんどいからと言って仕事を断ると前後しばらくの仕事がなくなることになります。スタッフにもお給料が払えません。そんな責任感?を抱えていたのか休むとか人に任せるの選択肢はわたしにありませんでした。でも冷静に、この働きかたってどうよ。ほかの人にも勧められるか?と自問自答してみると、やっぱり決して勧められない。
しばらく手伝ってもらえるヒマと体力のある両親と、文句言わず3人の子供を一日中見る夫と、理解あるお施主様(今から出産です!と打ち合わせをドタキャンした。すみません)と、わたしがいなくても全然しっかり仕事をすすめてくれる優秀なスタッフの支えがなければ成り立たなかった。わたしはずっと女性としてではなく男性としての働きかたでいたように思います。そして働くママは多かれ少なかれみんな同じ経験、思いをしているはずです。
働く女性であるわたしが、女性としての働きかたを否定し男性の様に働いていたらいかーん!そやしいつまでたっても女性が働きにくいんやんか!と思い直しました。主人がいない日の夜遅い仕事は事情を言って変えてもらう。
子供が熱を出した時は代わりに別の人に行ってもらう。案外それで問題なかったりします。

●助け合うこと
周りを見渡せば、子供や家族の事情で働きかたが制限されている女性がたくさんいます。仕事にやりがいを見いだしたい、能力のある女性がたくさんいます。そんな女性たちがちゃんと女性として各々の立場で力が発揮できるようにとママ建築士のネットワークをつくりました。1人では受けきれない仕事をだれかに手伝ってほしい。しばらくは子供の予定優先にしたいけどお手伝いならしたい。いざという時に代わりに現場に出向いてほしい。など足りない部分を助け合えばもっとたくさんの仕事に出会えるのではないか、もっとたくさんの人に喜んでもらえるんじゃないかと思うのです。忙しい時間の限られたママたちの要領の良さ、周りを見渡す目や気づかいの心はそのまま良い仕事となって還せるはずです。独立されているママ建築士さん、産休育休、妊活中でお仕事おやすみされているのママ建築士さん、随時登録の受付をしております。是非助け合いながら良い仕事を一緒にしましょう!

著、一級建築士事務所わびすき代表 奥田 智恵子